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Radio Wavelog -Contact Of Personality-

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ON AIR#638 キンモクセイとうどん

フリートーク
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西武池袋の屋上で、うどんを食べていた。

僕の座った席の左横には若い母親がいて、「食べたくない」とわがままを言う幼い我が子に手を焼いているようだった。
そして右横には、もう、『おばあちゃん』と呼ばれ始める年齢であろう女性と、年老いた老婆が向かい合わせで座っていた。二人は親子であるらしい。
老婆は自分の娘にうどんをわけてあげていた。
「おまえは食べなきゃダメだよ」
娘の女性は笑う。
「何言ってんの、お母さんこそ食べなきゃダメなんだよ」
と、うどんを戻そうとして途中でやめ、笑顔でうどんをすすり、慣れた手つきで母親の持っていたレモンティーの缶を開ける。もう何度も母親の缶を開けてあげているのだろう。

僕の両隣には親子の過去と未来があった。

僕と、僕の親はどちらでもない場所にいる。

気付けば東京にもキンモクセイが香り始め、その香りはところどころに漂う。僕の地元の市の花はキンモクセイだ。
また時間を戻すことはできなくとも、互いに老いを止めることはできなくとも、僕の右にいた親子のように、互いに想い合うことは、ずっとできるのだ。

食べていたうどんの臭いに混じり、キンモクセイの微かな香りが、この屋上にも、届く。
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