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ON AIR#481 ~東野圭吾 「手紙」~

書籍
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手紙 小説
手紙(文春文庫)

柔らかいピンク色のカバーとは裏腹に、暗く汚れた社会の色が文体から滲んでいるような印象を受けた。
下手に感情的な文を並べ立てるのではなく、淡々と綴る文章で、世間を表現しているからだろうか。

殺人を犯した兄を罵られて、人を殴るような、そんな心の優しい青年が、庇ったその兄のために、大学の進学を困難なものにし、音楽の夢を潰され、大切な恋人を失い、あげく、兄からの手紙を捨てるような青年になるまでの心の描写が、心を潰すような勢いで続く。
直貴が音楽のデビューを諦めると寺尾に告げる場面の、親友、寺尾の嘆き。大好きな恋人とどうしても結ばれたくて、コンドームに針で穴を開けざるを得なかった焦燥。何もしていないのに突然異動要請を受けたときのやるせなさ……読んでいて、どうしようもなく辛い。辛いとしか表現できない。

それでも……逃げないで、生きようとする直貴、由美子の姿が素晴らしい。普通の人なら、全てを投げ出して空っぽの人生を送るしかないのだろうに。

ジョン・レノンの「イマジン」歌うまでの終章は、圧巻中の圧巻と言ってもよかった。

私は手紙など書くべきではなかったのです――。
違うよ兄貴、と思った。あの手紙があったからこそ、今の自分がある。手紙が届かなければ苦しむこともなかっただろうが、道を模索することもなかった。


兄が、弟に手紙を書いたことで、してあげられた償いを、強く感じる文章だった。

東野圭吾、ミステリー作家のイメージがあったが、こんな素晴らしい人間的な作品があったとは。この本を貸してくれた後輩に、心から感謝をする。おかげで、読まず嫌いだった東野圭吾を好きになれた。
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Comments 1

のび太は受験生  

コメントありがとうございます。
イーグルスが好きとは、渋いですね。
僕は、「ならず者」というアルバムが好きでたまりませんでした。浪人時代、よく心を落ち着けるために聴いたものでした。
つまらぬブログではございますが、これからも暇があればごらんになってくださいね。

2007/03/20 (Tue) 02:43 | EDIT | REPLY |   

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