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ON AIR#447 ~角田光代 「キッドナップ・ツアー」~

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今日もバイト。しっかり稼いできました。
居酒屋って忙しいときと忙しくないときの差って激しいんだなってよく思います。

大学も今年度分の過程が終わり、新年会も含めて来られる学生が多かったです。僕も呑みたい。

二つ小説を買ったのですが、期待してなかった方の小説が面白くてしょうがありませんでした。


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キッドナップ・ツアー(新潮文庫)

角田光代さんの長編はこれが初めて。
解説は、重松清さん。

のっけから、「私はユウカイされた」。
その犯人はなんと、父親。
父親にユウカイされて、「私」はあてもない旅に出る。

小学五年生の主人公の女の子目線で語られていく作品だが、青春モノという内容ではない。いろいろなエピソードは挟まれるが、基本は父と娘のぎこちない会話が産む、頼りなくとも微笑ましい確かな関係性を描いた、人間が人間として成長するドラマである。

父親の子供に対する態度の描写がとても秀逸である。普段あまり顔を合わさなかった分のツケがまわって、たった一人の娘なのに、上手くコミュニケーションがとれない。それでも、好きだから、態度で示そうと、かっこ悪くとも一所懸命にアクションを取る。

そして、娘はそれを、鼻で笑ったとしても、その行為を全否定するくらいのイジワルな態度をとったとしても、父親の存在を自分から葬り去ろうとは決してしない。それどころか、旅を続けるうちに、自分が自分のうちに押し殺してきた「カッコ悪さ」を、自然と父から引き出されていく。

物語の本質ではないので言ってしまうと、この作品で、娘を誘拐した父親が、母に対して、何を要求し、どんな取引きを求めたのかは最後まで語られない。それは読者が自分の心の中で、解釈して自分の人生に重ねてみるべきだし、娘も、それを知ろうとはしない。分からないままでいいのである。

人間と人間は、もともと分かり合えない、本当のことまで知りこむことはできない。
しかし、互いにどんなに分からないものだらけの状態でも、旅路の中で、心のどこかで、互いに解り合おうという姿勢があれば、ゴールの仕方はいくらでも変わる。
最近のテレビの中では、家族という、一般的には、何よりも分かり合えてるはずの間柄同士で、誘拐以上の陰惨な事件が起きている。

世の中は、何を失いつつあるのか。
それに気づき、取り戻すために、僕らも、キッドナップ・ツアーをすべき時なのかもしれない。
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