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ON AIR#445 ~北尾トロ 「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」~

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男子の後輩の頭や尻を触ることがよくあるのですが、これ、セクハラで訴えられたら絶対負けますよね。男子ですけど。怖い怖い。

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裁判長!ここは懲役4年でどうすか(文春文庫)

裁判を傍聴するのが趣味になり、今やすっかり傍聴オタクとなった作家、北尾トロが、その傍聴記をしたためた、エッセイとノンフィクションを組み合わせたような本。解説は、角田光代さん。

刑事事件を中心に、皮肉たっぷりな章、笑える章、生々しい章など、タッチはそのままに、いろんな人間を傍聴オタクの価値観でぶった切っていく様が印象的だ。

これは物語口調ではなく、趣味感覚で書かれているから、よくある裁判ドラマのような、ありきたりな正義感や価値観で展開されていないのがいい。ドラマでは悪役になりがちな、検察官の純粋な奮闘ぶりが描かれたり、逆に、給料を取るために裁判を長引かせる悪徳弁護士の存在を嘆いたり。弁護士が全員ヒーローであるなんてばかげた勘違いだという、今まで自分達が知らなかった事実がずらっと並ぶ。

犯人たちの姿も実にさまざま。悪質な裁判であるにも関わらず、「あのネズミ」がプリントされたTシャツを着て裁判に臨む被告人がいたりと、笑いどころも耐えない。逆に、おおみそかを温かく迎えるためにわざと窃盗をして捕まっては留置所のご飯を頂こうとする人の家族の優しい会話など、必死に生きる人間たちの姿も、北尾トロが見たそのままに書かれている。

オタクの傍聴エッセイであるとはいえ、レイプや強制わいせつ、殺人などが、傍聴という娯楽の対象として描かれている点では、不謹慎でかなり否定的な意見も出てくるとは思うが、この作品で賞賛すべきは、裁判の中で繰り広げられる、本当の人間ドラマを見ようとすることで、逆に今までに感じなかった自分の生き方を分からせようと作者が意図しているところである。

本書の中で、「明日は自分かもしれない」ということを、ちらっと作者は書いている。あくまで趣味の目線から、現代社会が抱える他人事ではない裁判の問題(前述した悪徳弁護士の存在しかり、裁判員制度しかり。某映画のような痴漢冤罪もそうであろう)を掲げている。
そして、新聞記事にも載らない、ゴマ粒ほどの事件の中に、人間の抱く、もしかしたら他人には全く理解されない感情、価値観があることを示し、人間がかくも不穏な存在だということを証明している。

人間の本質はとらえようもない、ということだろうか。
僕らが裁判の傍聴には、興味本位では終わらない、人をひきつける凄い何かが潜んでいるのかもしれない。それを知ろうとして、裁判を見つめる人が、今日もどこかで暮らしている。もしかしたら、日本社会の隠れた名ジャーナリストなのかもね。
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