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ON AIR#428 ~山川元監督作品 「東京原発」~

映画
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東京原発
東京原発(2002)

レンタルビデオ屋でなんとなくパッケージを見ながらも、今日まで観てなかった作品。面白いとの話を聴いたので、本日鑑賞。

昼夜逆転の休暇中、眠れない夜にテレビをつけたら、チェルノブイリ原発など、核廃棄物などの処理問題についてのドキュメンタリーがやっていた。何万年も後まで被爆の不安と戦わねばならないプルトニウムの処理について困った国が頼るのはいつも地方だという批判。核廃棄物のキャニスターはこれからの20年で二倍以上に膨れ上がるということ。一方で、原子力発電所がなければ生活が保障されないという現実……。僕は怖くてさらに眠れなくなってしまった。

そしてテレビは、北朝鮮の核問題を繰り返し報道する。北朝鮮は何をやってんだ、と。日本は唯一の被爆国、というのはもはや有名な話、放射能汚染について語るとき、冗談は許されない雰囲気は、確かにある。

だが、核・原子力というものを娯楽の対象にして作られた日本映画というのもけっこうあるのだ。

誰もが知ってるものであれば、「ゴジラ」がそうだろう。原子力や核に対する批判の意を持って出現したゴジラだが、その存在は、日本人の核に対する恐怖が、頭から消えゆくにつれ、娯楽化していった。

沢田研二が主演を務めた「太陽を盗んだ男」というのも、素晴らしい映画であった。ある一人の理科の教師が原子爆弾を作り、日本を脅す、というもの。閉塞化した社会の中に生きる若者の苦悩を、核を通して表現しつつ、サスペンスとしても、一級品とも言うべきエンターテイメントに仕上がっていた。

しかしこの「東京原発」は、ちょっと違う。
国家を越えたテロリストや原爆が出てくるわけではない。怪獣が原発を襲うでもない。
じゃぁなんなのか、というと、冒頭から都知事が実に楽しそうな笑顔で「東京に原発を誘致しよう!」というではないか。

強烈な台詞でありながら、違和感もほとんどなく、さらりと言ってのけてしまう役所広司の上手さが光るが、ずいぶんと新しいことにチャレンジした映画である。

しかも、重いテーマでありながら、日本に名立たる名バイプレーヤーたちのとぼけた演技も見どころである。こういう作品の場合、ずいぶんと深刻になってしまいがちだが、そこを、敢えてコメディ・リリーフに徹するのがいいのだ。日本の原発に対する問題だけでなく、役所勤めなら当然知っておくべき事柄も平気で知らないおばかな役員たち。
ああ、実際にいるんだろうなぁ、こういう人。税金使って娯楽旅行している間、女にタッチしたり首筋なめたり、胸もんだりすることしか考えてないバカ議員とかよりはマシだろうけど、せめて税金を有効に使ってよと思う役員は絶対にいらっしゃるだろう。

おっと、話がそれたか。
んー、要は、だからこそ、人間的にリアルに映るので、怖さに震えるのを温めてくれ、欠伸がでるところをぐっとこらえさせてくれる。

しかしながら、このままノホホンというのかなと思ったら、その柔らかい雰囲気をいい意味でぶち壊してしまう後半からの展開には度肝を抜かれる。
言うなら前半に原子力の恐怖について延々と語ることで後半のサスペンスが限りなく高まるわけだ。ぬー、上手いナァこれは。

この映画、データを重箱の隅をつつくように指摘すれば多少のデータの誤りはあるようだが、大切なのは正確なデータというものではないだろう。

僕は今まで、原子力やら核やら放射能というのは、何か絵空ごと、それでなくても、国と国による、庶民の関心とは離れた場所で戦っている印象があった。
だが、この作品を観た後に、変化があった。これは誰にでも関わってくるとても関心を持つべき恐怖なんだ、と、感じるようにあった。

この映画の最大のテーマというのは、核というものをもう一度平和になれた人間たちは、見直すべきだという強いメッセージ、それしかないと思うのだ。決して完全に分かることはできなくても、今こうして何事もなく生きている奇跡を噛みしめることくらいなら、できるんだから。

ラストシーンまで観終わった後の不思議な爽快感と、恐怖による震えは、今でもはっきりと思い出せる。あのラストの意味はよく分からないが、作り手の最終的な問題提起、だと考えていいだろう。

政府はまだ原発を作ろうと企てている。時がたち、エネルギー資源がつき始めれば、また増える。そして場所はなくなり、いつか本当に、東京に原発ができる日が、来るのかもしれない。決して、ヒトゴトではないし、ヒトゴトにしてはならないのだ。

しかしながらこの都知事、カッコいいね。我々の心をしっかり分かっていて、それから判断を下している。

自分の意見は通すけども我々の意見は受け入れない現実の都知事とは大違い(苦笑)もっとフレキシブルになれよ、都知事。いつまでもそのままだと、太陽を盗まれてからじゃ遅いぞ。

そう、危険は常に僕らのそばにあるのだ。でもこの映画を観て、いくらそれに気づいたとしても、怖くて毎日眠れないなんてこともできないのが人間。核で死ぬのは怖いが、そのせいで過労で死んでしまったらバカみたいだし。

それでも日本が背負うリスクは今も増え続けているんだろうね。
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