ON AIR#2570 KUEKI RESSHA(2012)

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『苦役列車』(2012年 日本映画 114分)

森山未來さんを初めて映像で観たのは、『さよなら、小津先生』という、
君塚良一さんが脚本を務めた、とても素晴しいテレビドラマで、
そのドラマに出演した不良生徒役の俳優たちから、いま著名になった俳優、女優もたくさんいるのだが、
そのときの森山さんがとても好きだった。
そんな森山さんが、この作品で、19歳の若造を熱演している。
そして高良健吾さんも本当にいっぱい出てらっしゃる。
あと、前田敦子さん、こんなに可愛い人だったっけ、と思ってしまった。

山下敦弘監督、やっぱり好きだなあ。
虚ろな映画ならこの人の右に出る日本映画の監督はいないんじゃないか?

144回芥川龍之介賞作品が原作らしいのだが、
受賞作品だから読むという習慣がないので知らなかった。

日雇い労働をする二十歳前後の青年たちの作品。
涙、根性、夢、希望。
そんな青春映画にありがちなことを一切やらず、
まったくもって成長することのない主人公を描いているのだが、
最後のラストシーンが、言ってみれば始まりなんでしょうね。

そういえば、146回芥川龍之介賞受賞作家の、田中慎弥さんが、『情熱大陸』で、こう言っていた。

「世の中に嫌われてはいても、世の中の奴隷にはなっていないという自負がある」

その言葉を借りれば、主人公の貫多は、少なくとも世の中の奴隷ではなかったのかもしれないね。
どれだけ後ろ指をさされようが、自分だけで生きようとするわけじゃないですか。
欲望を理性で抑えないがために、どんどん孤立していくけれど、
どうしても嫌いきれない。どこか、本当は自分もこう生きたいのかもしれないと思わせてしまう部分がある。
逆に、変わっていってしまう人間の代表が高良健吾クンだったりあっちゃんだったりするから、対比としてそこが面白いんだろうな。

まぁ実際は、田中慎弥氏は、貫多のように日雇いのアルバイトもせずに、というか一切の職業を経験しないまま、デビューするまで書き続けてたっていうし、
貫多は過酷な労働条件で働き、カネも借りたりして、それこそ奴隷のような生き方もしているわけだけど、
心の根っこだけは、何にも属さない、自分だけで生きるという、そういう強さがある。

言ってみれば、孤独であることを真正面から肯定する映画なのです。
私はうらやましかったよ。
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Comment

  • 2013/02/07 (Thu) 23:34
    じゃまこ #- - URL

    これ、あれだよね!森山くんはこの主人公の気持ちを考えるために役作りのために四畳半のアパートを借りて風呂に一週間入らないで撮影にのぞんだってやつだよね?違ったっけ?なかなかクレイジーでいい役者だなと、なんかで読んで思った気がします。

  • 2013/02/08 (Fri) 20:19
    のび(田嶋高志) #- - URL
    コメントありがとうございます。

    じゃまこさま

    そうだよ。
    ゴールデン街近くで夜明けまで呑んでから撮影に臨んだりした日もあったみたいだね。
    そういうことができるのも、トップに立ち続けられる俳優だからこそなんだろうね。

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