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青春夜明け前

重松清さんの『青春夜明け前』を読み終えた。
青春、男子、エロをテーマに綴る七編の物語。

これ、10代に読んでいたらまだ魅力が分からなかった気がする。
中学卒業から10年ほど経った今読んだことで、特別な感じがある。
とはいっても10代なんてすぐそこにあったような気もする。

個人的には『俺の空、くもり。』と『春じゃったか?』に感動した。
前者の主人公は、勝手に自分を無理やりに重ねてしまったし、
後者も、高校を卒業してからの親に対する、くすぐったいような気持ちの表現がやけにリアルで、
自分もこんな気持ちを抱えていたことがあったと、妙にしみじみとした想いにかられた。

全然ハナシ違うけど、「青春」という言葉は、日本語にしかない味わいがあるね。
英語に訳してみてもいろいろあるけど、「青春」という響きにまさる英語はないし。

この小説。
「青春」に潜むノスタルジックな甘さと、渇いた苦笑いが、ところどころに出てくる作品でした。
青春が、いつまで続き、なにをもって終るのかはわからないけれども、
よく言われる「生涯青春」なんて言葉には疑問を持っていて、
青春というモノは、いつか「老い」とともに散っていくもんだと個人的には思っています。

じゃあ、終ってしまったらどうするか?
有限の人生において大事なことは、実は、何かが終ったその先なわけです。
どうあがいても過去は過去は過去。あるのは残された人生なのです。
短いのか長いのかわからなくても、あるのは、行ってしまえば余命なのですね。

ちょいと深読みですが、重松清さんは、実は誰にでもある青春を描くことで、その先のことを読者に問いたかったのだと思います。
どの作品にも、青春のその先のシーンがあるわけではありません。
でも僕には、この作品に描かれる多くの別れを読み、
終りある青春と人生ではなく、終りない希望と未来を感じました。

この作品の人たちと同じように、僕らも、青春の中から生まれた心を道連れにして、生きてゆくことができる。
それは実は、何よりも、素晴しいことなんじゃないかなぁと。

ともかく、久しぶりの重松清さんの小説でした。
次は何を読もうかしら。

それはなんて青春!
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