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ON AIR#1893 命の報道

テレビ・ラジオ
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・再び金八先生の話になるのだけど、ファイナルを観ていたら、
金八先生の妻、天路先生(倍賞美津子)が、写真で出てきた。
知っている人も多いけど、天路先生は亡くなっている。

僕が金八先生を初めて観たのは第5シリーズで、すでに亡くなっていた。
いつ亡くなったのかを調べたら、亡くなったのはシリーズ中ではなく、
第3と第4の間に亡くなった、つまり死去のシーンは放送で描かれていないのだった。
(ちなみに金八先生との結婚も、第2シリーズの後。これも放送されてない)

これにはビックリした。僕は知らなかったので。
どんな事情があったのか知らないけど、設定という名のもとに天路先生は亡くなっちゃったのだった。

だからといって、これで『金八先生』を嫌いになったと言いたいわけではありませんし、これを汚点だとけなすつもりもありません。

考えるのは、死のその先のこと。
第4シリーズで亡くなった設定でストーリーが描かれるわけなんだけど、シリーズはそれ以降もどんどん続いていくわけである。

もちろん亡くなっているのだから、写真だけでの出演で、倍賞美津子さん本人は登場できないのだけど、
果たして製作側は、シリーズがここまで続くと見越して金八先生を作っていたのだろうか。
たぶん思ってなかっただろう。

もし天路先生を、設定上で死なせていなかったら、天路先生はどうなっていたんだろう。
どうやって、このシリーズを生きていたんだろう。
でも、「設定」というたった二文字のために天路先生は亡くなり、
以後のシリーズで、金八先生は天路先生のいない世界を生きることになり、
製作スタッフ、そして脚本家も、天路先生のいない世界を構築することに四苦八苦する。

簡単なことのようで、これは非常に大きい。
たとえドラマの世界でも、ひとりの人間が死ぬということが、これほどまでにその後の世界に影響を与えるのである。

別に金八先生が命を軽視しているとかそういうことではないんだけど、観ていて僕はそんなことを考えていた。
だから、物語、とりわけ連続ドラマを創るうえで、人の生き死にを、「設定」だけでとらえてはいけないんじゃないかと思った。
脚本を作る段階で、作り手は万物の神である。
人を生かすことも死なすことも、すべてが自由。
ただひとつ、本物の神と僕らが違うのは、そこに観る側に対する「責任」が生じるか否かだ。
どうも最近の映画やドラマ、僕で言えば演劇もそうだけど、その「責任」をあんまり考えない“神様”が多いんじゃないかと思う。


・誤解を恐れずに言うと、昨今の報道に対しても同じことを感じる。

命なんて、実はちっぽけなものなのかもしれない。
生きていれば、いつか必ず命を失うときが誰にでもやってくる。
日々、人は死んでいるし、大事故が起きたって、それは数値になってしまう。

それでも。
僕らは命を軽く扱ってはいけないのだ。

命が軽いのかどうかと、命を軽く扱っていいのかどうかは、別の問題なのだから。

今回の東北・関東大震災での犠牲者は、10000人を越えたという。
僕みたいな無事だった人の立場にとっては、それはただの数値かもしれない。
でも被災地、いやこの日本のどこかに、それが数値でもなく、あらかじめ決められた設定でもなく、
急に大切な人の命を見失い、その人がいない世界を生きているということを、忘れてはならない。

しかしテレビは、
とくに某民法放送局は、
何もかも事実だけで語る。

繰り返されてきた人の数値化。仕方のないことかもしれない。
でも、その向こうにあることを、もっと映さないといけないときがある。
設定とはまったく違う、命を、死を、生を、報道しているだろうか?

命は視聴率をとるための道具じゃないから、配慮しなきゃいけないことがある。
でもそれができていない。
報道する側がそれをもとに演出を加えてしまえば、すべてが作り物になってしまう。
キング・カズのゴールすら、小道具にすりかえられる。

創るのは、僕らの仕事だ。
報道の仕事じゃない。

奇跡の救出劇? ふざけるな。
人が命を賭して誰かを救助したことを、人が生きるよりも苦しみから這い上がろうとしたことを、劇にするな。
うわべだけの希望を映すくらいなら、本当の現場を見つめろ。

誰もが死をリアルにイメージできない愚かな人間かもしれない。
けれど、犠牲者の名前の一つ一つが並んでテロップにされたのを見て、血が凍ったように。
海外メディアの撮影した犠牲者の写真を見て、死を突きつけられたときのように、
死を想うことならできるはずだ。
そして、生きることができるはずだ。
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