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ON AIR#1073 童貞にシナリオなんて書けないッ!

僭越ながら
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・『俺たちに明日はないッス』という映画がよかった、という話を、後輩が読んでくれてたみたいです。
脚本家、向井康介さんの童貞マインドが全開で、この作品を、タナダユキでなく、向井康介さんとコンビで映画をやっていた山下敦弘が撮ったら確実に灰汁ばかりの傑作ができていたと思うんだけど、タナダユキだからこそ、登場人物の女性があれだけ生生しかったのかな。女性監督が撮っているから女の子がすっげー魅力的っていうか、リアルな人間として描かれてるんだけど。逆に男の子は脚本家の力をめちゃくちゃ借りて撮ってる印象があった。

・今日のタイトルは実際に偉い脚本家が生徒に言い放った言葉なんですけども。
今更こんなことを言うのも向井さんに失礼な話ですけど、『俺たちに明日はないッス』という作品は、『月刊シナリオ』の向井康介さんの作者ノートを読む限り、そういう経験を元に、「自分が童貞だった頃」を振り返っていくことで生まれた傑作なんだよね。今はもう大人だったけど、客観的に自分がまだガキだった頃を思い返しているから、やっぱり上手くまとまる。
やっぱり、童貞の“当事者”がホンを書くと女性を型にはまった記号的な人間に書いちゃうところがどうしてもぬぐえない。描きたいところだけ描かれて、主観的で、ちっとも物語として成立しない。けれど、勝負をするとしたら、やっぱり現実的なパワーを出し切ることでしかないんだと思う。破壊的な衝動とか、苦悩を超えた苦悩とか。それが伝わる可能性は、限りなく低いのだけど。

・この日、部活の飲み会があって、その後輩と話していたのだけど、
「心は童貞でありたい」という話を聞いて、なんか、腹が立つとは思わないけど、違うな、と思った。
だって「童貞でありたい」と思う時点で、もう、その人は童貞じゃないんだよね。
本当の当事者は、「ありたい」なんてゼッタイに思わない。その状態をぶっ壊して、大人になりたい、気持ちで一杯なのだ。
だって、どうしたって、見下されるわけだ。見下されることしか、経験してないからさ。

・憧れるは数々の友人。
恋する女性に対して、潔癖であることを地で貫こうとしてる友達がいる。
女性とか、恋愛とか、そういうところとはまったく無縁のところで異性とも同性とも友情関係を築ける友達がいる。
別れたらすぐに次の恋をキープしてある友達だっている。
僕は、誰にもなりきれない。
理性と本能の狭間にあるだけの、ただのヒト。


そんな僕の横で、同級生の部員たちは部室の取り合いに忙しそうだった。金のない田舎の高校生たちにとって、実家暮らしの十代にとって、部室はラブホテルだった。ロッカーの裏に使用済みのコンドームを見つけては、僕とあの娘はこんなことしない、もっと綺麗なふたりなんだと周りを軽蔑した。反面、部員たちのセックス話に勃起して毎日オナニーばっかりしていた。本当に汚かったのは僕の方だ。映画を観て、ロードショーを漁り、知りうる限りの俳優の名前を教室の自分の机に書き続けた。机はすぐに埋まり、真っ黒になった。記憶力だけはよかったけど、一人で悦に入ってるだけで、誰もほめてくれなかった。
(向井康介 月刊シナリオから、作者ノート『僕の「俺たちに明日はないッス」』より)
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